冬眠休眠研究フォーラム
Forum for Hibernation & Torpor Research

PubMedID 33627277
Title Elevated ambient temperature accelerates aspects of torpor phenology in an obligate hibernator.
Journal Journal of thermal biology 2021 Feb;96102839.
Author MacCannell ADV, Staples JF

気温と深冬眠・冬眠期の持続時間との関係

Posted by Yoshifumi Yamaguchi (山口 良文 ), 北海道大学 低温科学研究所 冬眠代謝グループ(山口研)
投稿日 / Date 2021/07/05

冬眠中の低体温状態(Deep torpor, 深冬眠, 深休眠)の持続時間は外気温に左右される(気温が低いほど長くなる)という、古くから観察されてきた事実があります。実際、キンイロジリス、ホッキョクジリス、シリアンハムスターなどで報告されています。本論文では主に新大陸の冬眠研究で汎用されるジュウサンセンジリス(Ictidomys tridecemlineatus)で同様の現象を報告しています。といっても本論文の主眼はそこというよりは、温度・明暗条件一定下でジュウサンセンジリスを飼育した場合に概年リズム依存的に冬眠が見られるよ、という点で、この点は多くの人が観察しているにもかかわらず論文としてのしっかりした報告はなかったとのこと。面白い観察事実として、飼育温度が高いと、深冬眠持続時間だけでなく、冬眠期間自体や次の冬眠サイクルまでの期間も短縮した点であると述べています。現象論の論文ですが、深冬眠や概年リズムの分子機構に、温度依存的な機構がどの程度関わるのか、考える上で興味深いです。カナダのJames F. Staplesさんと, 現在英国のAmanda D.V. MacCannellさんによる論文でした。