哺乳類受精卵への光の影響
Posted by | 清成 寛, 理化学研究所 生命機能科学研究センター 生体モデル開発チーム |
---|---|
投稿日 / Date | 2021/08/31 |
世界で初めてICSIによるハムスター産仔の誕生を成功させた堀内先生の研究室から2007年に発表された論文で、室内や顕微鏡等による光が哺乳類の胚発生に影響を及ぼすという論文です。マウスとハムスターの1細胞期胚を15分間 白色蛍光灯にさらした時の胚盤胞までの発生について調べた結果、マウスの胚発生には影響ありませんでしたが、ハムスター胚は全て2細胞期胚で発生が止まってしまいます。そこで白色蛍光灯にさらした際に発生する活性酸素種(ROS)を測定したところ、ハムスター胚はマウス胚より多くのROSを発生していることがわかりました。また、影響がないと思われていたマウス胚においても、実は胚盤胞期胚におけるアポトーシスが増加していることが確認されました。種によってその感受性は異なるものの、胚への光の影響は決して無視できないと論じています。現状、ハムスターの胚操作においては、光源を赤いセロファンで覆うなどの工夫が必須となっていますが、このような種差はどこから生まれるのかも興味がありますね。