冬眠休眠研究フォーラム
Forum for Hibernation & Torpor Research

PubMedID 33536943
Title Dynamic RNA Regulation in the Brain Underlies Physiological Plasticity in a Hibernating Mammal.
Journal Frontiers in physiology 2020;11624677.
Author Fu R, Gillen AE, Grabek KR, Riemondy KA, Epperson LE, Bustamante CD, Hesselberth JR, Martin SL

ジュウサンセンジリスの夏〜冬〜深冬眠〜中途覚醒〜春の遺伝子発現変化

Posted by 山口良文, 北海道大学低温科学研究所 冬眠代謝
投稿日 / Date 2021/11/24

少し前の論文になりますが、ジュウサンセンジリスの冬眠研究で著名なSandy Martin labからの報告。冬眠生活環の各タイムポイントでサンプリングした試料からRNA-seq解析を行って、どのような遺伝子発現変動がみられるかを網羅的に解析した論文。臓器は本論文では前脳・視床下部・脳幹とみている。低体温の深冬眠で発現が変動する遺伝子というのは、おもに深冬眠への導入時に多くが発現変動する、、というのは予想通りだが、面白いのは深冬眠の後期までの間にも数は少ないながら発現量が変化する遺伝子が取れている点。低体温の深冬眠時には転写はほとんど生じない(この点はGRO-seqを用いて別論文で検証している)ので、mRNAの安定性や減衰速度に差があるのでは、という議論をしている。ではそういったmRNAにはどういった特徴があるか、等々も調べている。またRNA結合たんぱく質でRNA安定性に関与するMex3cが深冬眠導入時に発現が減少する様子が捉えられている。網羅的記載研究でやれるとこをとことんやっている印象。またジリスのRNAseqデータベース(https://raysinensis.shinyapps.io/squirrelBox/?gene=Zfp36l2)も公開された。調べている遺伝子が冬眠の際にどんな挙動をしているのか興味がある、冬眠研究者以外の方々にも非常に有用でしょう。