比較ゲノム配列解析〜冬眠哺乳類で保存性の高い遺伝子群の同定
Posted by | Yoshifumi Yamaguchi, 北海道大学低温科学研究所 冬眠代謝生理発達分野 |
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投稿日 / Date | 2023/05/05 |
冬眠する哺乳類と、冬眠しない哺乳類とで、ゲノムのどこにどういった違いがあるのか?もしあるとするならが、それは冬眠する能力とつながるのか?は、ゲノム解読が進みつつある現代でも未解明のクエスチョンです。この問題に正面から取り組んだ論文が出ました。といっても本論文のフォーカスはもっと広く、多様な哺乳類のゲノム配列を比較解析することで、想定される共通祖先型配列からどの程度現在の種でその配列が保存されているか、あるいは多様化しているか、を明らかにした、というもの。その中の解析事例として、嗅覚、脳サイズ、冬眠、が挙げられています。冬眠について簡単に紹介すると、深冬眠(この論文では体温18ºC以下を24 時間以上と定義)を行う22種と、冬眠しない154種を比較して、冬眠する哺乳類で有意に保存されている配列(とそこに該当する遺伝子)を見出したそうです。これらの機能検証はこれからの課題でしょうが、候補遺伝子を提示したという点で面白いです。気になるのは、この比較に用いた22種の冬眠する哺乳類、半分はコウモリのうえ、冬眠様式も異なるものが多く含まれてて、偏りがあります。コウモリが多いことによるバイアスは除去したとはありますが、手法の詳細についてしっかり理解できていません。この種の解析に詳しい方に、ぜひ解説・コメントをお願いしたいところです。まずは情報共有まで。